訪問診療について

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「訪問診療」とは、「在宅医療」の種類の一つです。在宅医療とは、自宅や施設など、日ごろ住み慣れた場所にいながら、外来と同等の医療サービスを受けられるものです。在宅医療には、ほかに「往診」があります。「往診」とは、基本的にご自宅や施設において症状や容態が悪化した時のみ、医療機関にいくことができない患者さまやご家族の要請を受け、その都度訪問して診療を行うものです。

それに対して「訪問診療」は、計画を立てて定期的に自宅や施設を訪問し、在宅での医療サービスを提供するものです。月2回の訪問が基本となっており、たとえば「毎月第2・4〇曜日の午前もしくは午後」というように訪問日時を決めます。その日に医師や看護師が患者さまのご自宅や施設を訪問し、診療を行います。

診療内容を含めた診療計画に関しては、これまで治療を担当していた主治医の先生や、ケアマネジャーの方、ご家族を交えてお話し合いをし、決定していきます。診療内容としては、診察および薬の処方や各種処置に加えて、患者さまやご家族より療養における様々なご相談も承り、アドバイスもさせていただきます。

訪問診療の対象となる範囲

訪問診療範囲のイメージ

当院を中心に半径10km以内、車により約30分で移動できる範囲を対象に訪問診療を行っています。訪問診療以外にも、急な病状の変化や体調の異変、その他の緊急時の往診にも対応するなど、しっかりサポートを行っています。 自力での通院が困難な患者さまには体調管理やその他サポートについてご自宅にて行う事ができますので、ぜひご相談ください。
ご本人でなく、ご家族の方でもご相談に応じますので、お問い合せください。

訪問診療の対象となる方

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訪問診療の対象となる方は、自宅や施設などの「居宅」で療養を行っていて、疾病や傷病のため、病院に通院して診療を受けることが難しい方とされていますが、患者さま及びご家族の希望、主治医の判断などによって総合的に判断していきます。訪問診療というと、高齢者の方が対象と思われているかもしれませんが、高齢者に限らず、何らかの理由で通院が困難な場合や、がんのケア、緩和治療なども対象となります。

以下のような、何らかの理由で通院が難しい方が対象となります。

  • 障害や高齢などが理由で、要介護状態にあり、一人での通院が難しい方
  • 外傷の後遺症により歩行が困難な方
  • 寝たきり、あるいは寝たきりに準じた状態で通院ができない方
  • 人工呼吸器や胃瘻、カテーテル等を装着していて移動が困難であり、居宅での医療管理が必要な方
  • 末期がんなどにおける治療や緩和ケアを自宅や施設で受けたいという方 など

上記の理由以外でも、ご自宅や施設での療養を希望される方、病院を退院後、ご自宅や施設での療養を送られる方など、様々な方が訪問診療の対象となります。訪問診療を希望される場合は、ご不明点等、お気軽にご相談ください。

訪問診療で受けられる
処置や検査

訪問診療で受けられる処置や検査のイメージイラスト

現在、在宅医療では、各種医療機器が高性能化、小型化し、医療技術も進歩していますので、病院を退院した後なども、安心して自宅や施設で療養することができます。当院では、全身状態の管理をベースとして、以下のような処置や検査が可能となっています。

  • 体温や血圧などの測定による健康管理
  • 採血、検尿などの検査
  • 超音波(エコー)、心電図などの検査
  • 薬の処方、点滴
  • 経管栄養、中心静脈栄養・CVポート管理
  • 胃瘻管理
  • 経尿道カテーテル、各種ストーマの管理
  • 在宅酸素療法管理
  • 人工呼吸器の管理・カニューレ交換
  • 末期がんの緩和ケア
  • 褥瘡(床ずれ)への処置
  • 新型コロナウイルス、インフルエンザなど感染症の検査
  • 予防接種の対応

処置や検査に関しては、患者さま、ご家族、主治医の先生、ケアマネジャーの方とともに、あらかじめ治療方針やスケジュールを決めて行っていきますが、健康状態や環境等の変化があった場合は、随時、診療内容の見直しを行っていきます。また容体の急変などが生じた場合、入院が必要と認められた場合は、迅速に病院と連携して対応します。また診療に加え、ご本人やご家族の様々な療養上のご相談にも応じてさせていただきます。

在宅医療の費用について

在宅医療の費用のイメージイラスト
  • 在宅医療は、各種保険が適用されます。
  • 標準負担額は在宅で月2回の定期訪問及び、24時間365日体制に対する1か月あたりの負担金の目安となります。(H30.8.1~)
  • 注射などの処置や検査、訪問スケジュール以外の往診を行った場合は、別途費用が掛かる場合があります。

月額の費用の目安

医療費、居宅介護療養管理指導費(月2回訪問の場合)

  標準負担額 負担額上限
1割負担の場合(70歳以上) 約 8,000円/月 18,000円/月
2割負担の場合(70歳以上) 約16,000円/月 18,000円/月
3割負担の場合(70歳以上) 約24,000円/月 ※高額療養費による返還
3割負担の場合(69歳以下) 約24,000円/月 ※高額療養費による返還

※初診月は上記と異なります。

  • 訪問診療は医療保険の適用となります。
  • お住いの形態(自宅か施設か)、訪問診療を提供する患者さまの人数(個別診療か集団診療か)、身体の状況、診察の頻度、保険の自己負担割合によって費用が異なります。
  • 「限度額適用認定証」をご提示いただくと、1か月のお支払いが上限額までとなります。 詳しくはお住まいの市区町村の担当窓口か、ご加入の医療保険者までお問い合わせください。
  • 公費負担を受けられている方の医療費は、公費でまかなわれます。
  • お薬は、院外処方となりますので、薬剤費は別途必要となります。
  • 介護保険をご利用の方は、居宅療養管理指導料が必要となります。
  • 交通費は別途ご負担いただきます。

訪問診療における
緩和ケアについて

在宅緩和ケアのイメージイラスト

緩和ケアとは、病気を治す治療とは別に、治すことを目的とするのではありません。この場合は病気による体や心の痛みや苦痛を和らげ、患者さまを支えて、患者さまのクオリティオブライフを高め、生活やその人らしさを大切にしていくことを目的とするものです。残された貴重な時間を、住み慣れた場所で、家族や愛着のあるものに囲まれて暮らしたい、という患者さまの想いを、訪問診療での緩和ケアでサポートしていきます。

緩和ケアは、がんなどの末期に対するケアと思われているかもしれませんが、緩和ケアはどのような病状であっても、どのような時期にも受けられるものです。病気は末期だけが辛いのではなく、初めて病気と診断された時や治療が開始された時、治療中、治療を止めようと言われた時、それぞれの場面で辛い想いを持たれることもあるでしょう。痛みや苦痛を感じる時は、すなわち緩和ケアが必要な時です。緩和ケアは原則的に病気を治すための治療と並行して行われるものと考えられています。

緩和ケアは以下のような方が対象となります

  • がん、その他の慢性疾患・難病において、十分な治療効果が期待できない方
  • 様々な苦痛、不快な症状の緩和を図るための医療を望む方
  • 病気療養の中で、不安などの精神的な問題に対し、ケアを必要と感じる方
  • がん等を治療中で、主治医以外に身近に相談できる医師を探している方

対応する主な疾患

  • がん(悪性腫瘍)
  • 心不全
  • 腎不全
  • 肝不全
  • 認知症
  • 神経疾患
  • 非がん性呼吸器疾患(COPD、間質性肺炎)など

在宅で行う緩和ケアの内容

がんや慢性疾患に伴う痛みや嘔気、だるさ、食欲低下、精神的なつらさに対し症状を緩和する薬の処方や点滴を行います。がんの痛み等、一般の鎮痛剤で痛みが取りきれない場合は、モルヒネなど医療用麻薬を含む疼痛管理・処方を行っており、持続皮下注ポンプの指導・管理、飲み薬、座薬、テープ剤など様々な経路を用いての投与も可能となっています。
また、できるだけ薬物によらない緩和ケアも行います。在宅酸素療法や在宅陽圧呼吸療法(非侵襲的)、胸腔穿刺、腹腔穿刺など、患者さまの病状や体調に合わせ、適した緩和ケアを実施していきます。
(※多職種連携の中で訪問リハビリテーションの依頼なども可能です)

ご家族へのサポート

在宅医療における緩和ケアでは、患者さまのご家族へのサポートも行っていきます。ご家族が抱える様々なお悩みや疑問、たとえば病気が進行していくとどんなことが起きるのか、痛みなどが出た場合、在宅ではどのような医療ができるのか、症状が急変したときはどうすればよいか、家族としてどう対応していけばいいのか、等々といったものです。そうしたお悩みや不安に対して、適切なアドバイスも行うなどします。